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2023/11/21

今シーズンのインフルエンザ、「手洗い」「マスク着用」「換気」などの基本的感染対策とワクチン接種が重要‼

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業務執行理事 峯 眞人

今シーズンのインフルエンザの流行は、コロナ禍前までの流行のパターンとは全く違っています。例年ですと12月半ばか後半に流行が始まり、年が明けた1月後半から1~2か月間が流行のピークです。この時期は主にA型インフルエンザが流行し、3月初めから後半の1か月くらいはB型インフルエンザの流行がメインになります。

しかし今シーズンは2月から3月ころにかなりの規模のA型インフルエンザの流行が見られ、その後患者数は減ったものの完全には収束せず、ダラダラと小流行が続き、8月後半から再びA型インフルエンザの大きな流行が起こっています。

地域によっては6月、7月に大きな流行が見られたところもあり、今後どのような流行のパターンになるのか、なかなか見通せない状況が続いています。

新型コロナが流行していた3~4年、インフルエンザはほとんど流行していませんでした。そのためすべての年代においてインフルエンザウイルスに対する免疫が低下しているか無い状態になっています。このような状況下では、A型・B型の複数の型が同時に流行することも考えられます。

このような異例の流行にどのように対処したらよいか考えてみます。

Ⅰ.主な症状は?

インフルエンザの症状の特徴は①38℃を超える高熱 ②全身のだるさ ③体中のあちこちの痛み ④だんだんひどくなる咳などで、5~6日程度続きます。特に高熱が出始めた頃から1~2日は突然大きな声を出して走り回るなどの、異常行動が見られたり、時に熱性けいれんを起こすこともあり注意が必要です。

Ⅱ.診断は?

発熱後6~12時間経過すると、インフルエンザ迅速検査などで診断可能になりますが、発熱後短い時間では正確な診断ができないことも多く、受診のタイミングに注意が必要です。また集団生活をしている場合はそこでのインフルエンザの流行状況や、家族の方の感染の有無は診断の大きな決め手になります。

Ⅲ.治療は?

抗インフルエンザ薬の投与が行われる場合が多いと思いますが、これらを使用しなくとも、適切な飲食や安静、解熱鎮痛薬などの対症療法のみでも多くは軽快します。ただし小児の場合は脳炎・脳症・筋炎・肺炎などの合併症が見られることがあるため、かかりつけの小児科を受診し、お子様の体質や基礎疾患などを考慮した治療をしてもらいましょう。

Ⅳ.感染予防対策は?

「手洗い」「マスク着用」「換気」など、コロナ禍で行っていた基本的な飛沫感染対策が有効です。また発熱と咳が見られた場合には、登園や登校は控えましょう。

Ⅴ.インフルエンザワクチンは接種するべき?

インフルエンザワクチンは感染を完全に予防することはできませんが、重症化を予防する効果は十分です。生後6か月以降のお子様が接種可能ですが、基礎疾患の有無、前年の接種歴などにより接種回数が異なる場合がありますので、罹りつけの先生に母子健康手帳を見ていただき、接種回数などを相談してください。 また今シーズンは例年と違い、非常に早い時期からインフルエンザの流行が始まり、かなりの規模の流行になっている地域も多く、ワクチン接種の前に感染してしまったり、2回接種が必要なお子様が1回接種後間もなくに感染してしまった方などもおられると思います。 一度罹ってしまったのなら、もうワクチンは必要ないと考える方もいると思いますが、今シーズンはすでにA型インフルエンザが2種類流行している地域が増えてきています。これからB型インフルエンザも流行してくる可能性は十分ありそうです。もしすでに今シーズンインフルエンザに罹ってしまった場合でも、その株以外のインフルエンザに感染し重症化する可能性があります。 現在主に使用されているインフルエンザ不活化ワクチンにはA型が2株、B型が2株の計4株が含まれています。すでに罹ってしまった場合であっても、体調の良い時を見計らって、是非必要な回数のワクチンを受けることをお勧めします。


今シーズンはインフルエンザだけでなく、いろいろな種類の感染症が流行を繰り返しています。一方、医療現場では各種治療薬が不足しており、診断がついても十分な治療ができない状況も起こっています。やはり何と言っても重要なのは感染の予防です。 今流行している感染症の中で、ワクチンがあるのはインフルエンザと新型コロナだけです。せめてワクチンが存在する感染症については、ワクチンでしっかり予防することを心がけてください。