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2023/03/31

子どもたちにとってのこれからのマスク対策

ブログ

4月以降、子どもたちの学校生活におけるマスクをどのように考えたらよいのか、なかなか具体的な対策が見えない中、3月17日に文部科学省から学校でのマスク着用の考え方が発表されました。

この考え方の根拠として、第118回(令和5年3月8日)新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料「これからの身近な感染対策を考えるにあたって(第三報)」 ―新たな健康習慣”についての見解―(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001069238.pdf)等を参考にしたものと思われます。

以下に「これからの身近な感染対策を考えるにあたって(第三報)」からの抜粋を提示します。ここに示されたマスク着用の考え方を念頭に置き、令和5年3月 17 日に文部科学省初等中等教育局長名で出された「新学期以降の学校におけるマスク着用の考え方の見直し等について(通知)」(https://www.mext.go.jp/content/20230317-mxt_kouhou01-000004520_3.pdf)を読んでいただくと、マスク着脱の理由が分かりやすいと思います。こちらについても以下に抜粋を提示いたしますので、是非参考にしてみてください。


[新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料]
「これからの身近な感染対策を考えるにあたって(第三報)」―“新たな健康習慣”についての見解―

[一人ひとりの基本的感染対策の考え方]

新型コロナウイルス感染症だけではなく、一般に感染症の流行が落ち着いている時期で あっても、地域での感染症の流行状況に関心を持ち、自らを感染症から防ぎ、身近な人を守 る、ひいては社会を感染症から守ることは重要であり、以下の基本的な対策を一人一人が身に着けておくことが必要である。特に呼吸器疾患は高齢者に対しては生命にかかわるリス クが高いため、高齢者の方々に感染が及ばないような配慮は重要である。

感染防止の5つの基本

  1. 体調不安や症状がある場合は、無理せず自宅で療養あるいは受診をする
    発熱・下痢・嘔吐・発疹などの症状が出てきた場合には、無理せず自宅で療養し、加えて体調がよくないときは医療機関を受診する。ただし、検査のみを目的とした救急外来の利用は控える。職場や学校などは、体調不良による休暇等を取得しやすい環境を整えるべき。 なお、高齢者や持病のあるような重症化リスクの高い人と会う際には、体調管理をより厳重にする。
  2. その場に応じたマスクの着用や咳エチケットの実施
    マスク着用には、他者を感染させない効果に次いで、自らが感染するリスクを下げる効果も認められている。マスク着脱の判断においては、地域の感染症の流行状況、周囲の混雑状況(密集状況)、空間の広さ狭さ、その場にいる時間の長さなど感染のリスク、目の前にいる人の重症化リスクの程度、不特定集団の中かどうかなどを考慮する。マスク着用を呼びかけられている場面では、できるだけ着用に応じる。なお、マスクなしでの対面接触を避けることについて、互いに理解・尊重することが必要。外出時はマスクを携帯し、必要に応じていつでもマスクの着用ができるようにしておく。
    *咳エチケット:他人に感染させないために、咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ ペーパー ・ハンカチ、袖 など を使って、口や鼻をおさえること。
    *一般的に使用するマスクは、不織布マスクがよい。
  3. 換気、密集・密接・密閉(三密)の回避は引き続き有効
    特に不特定多数の人がいるところでは、換気(空気の入れ替え)、人との間隔を空ける、すいている時間帯や移動方法の選択、すいた場所の利用などによって、呼吸器感染症の感染リスクを下げられる。
  4. 手洗いは日常の生活習慣に
    食事前、トイレの後、家に帰った時などには、まず手を洗う。手洗いは 20~30 秒程度かけて流水と石鹸で丁寧に洗う。石鹸がなくても同様の時間をかけて丁寧に洗う。適切な手指消毒薬の使用も可。
  5. 適度な運動、食事などの生活習慣で健やかな暮らしを
    一人一人の健康状態に応じた運動や食事、禁煙等、適切な生活習慣を理解し、実行することが大切。特に基礎疾患のある方は、かかりつけ医などのアドバイスを参考にして、 体調管理に気を付ける。

これらを基本とした中で、学校におけるマスク着用の考え方についての詳細は、以下のとおりです。

[文部科学省初等中等教育局 健康教育・食育課 資料]
新学期以降の学校におけるマスク着用の考え方の見直し等について(通知)

1.マスク着用の考え方の見直しについて

[基本的な考え方]

  • 児童生徒及び教職員については、学校教育活動に当たって、マスクの着用を求めないことを基本とすること。
  • ただし、登下校時に通勤ラッシュ時等混雑した電車やバスを利用する場合や、校外学習等において医療機関や高齢者施設等を訪問する場合など、マスクの着用が推奨される場面においては、児童生徒及び教職員についても、着用が推奨されること。
  • 基礎疾患があるなど様々な事情により、感染不安を抱き、マスクの着用を希望したり、健康上の理由によりマスクを着用できない児童生徒もいることなどから、学校や教職員がマスクの着脱を強いることのないようにすること。児童生徒の間でもマスクの着用の有無による差別・偏見等がないよう適切に指導を行うこと。
  • 学校教育活動の中で、「感染リスクが比較的高い学習活動」の実施に当たっては、活動の場面に応じて、別添に示すような一定の感染症対策を講じることが望ましいこと。これは、部活動等において同様の活動を実施する場合も同様であること。
  • 加えて、新型コロナウイルス感染症に限らず、季節性インフルエンザ等も含め、感染症が流行している場合などには、教職員がマスクを着用する又は児童生徒に着用を促すことも考えられるが、そういった場合においても、マスクの着用を強いることのないようにすること。
  • また、咳やくしゃみの際には、咳エチケットを行うよう児童生徒に指導すること。

2.効果的な換気の実施について

  • 「マスク着用の考え方の見直し等について」においては、「・・・基本的な感染対策は重要であり、引き続き、「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等の励行をお願いする。」とされているところであり、学校においても、引き続き、効果的な換気の実施が求められること。
  • 具体的な換気の方法や考え方については、「感染拡大防止のための効果的な換気について」(令和4年7月14日新型コロナウイルス感染症対策分科会提言)や「新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための換気の徹底及びその効果的な実施について」(令和4年9月2日付け文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課事務連絡)等を参照すること。
  • 換気の目安としてCO₂モニターにより二酸化炭素濃度を計測することも有効であること。この点、学校環境衛生基準(平成21年文部科学省告示第60号)では、1,500ppmを基準とされているが、新型コロナウイルス感染症対策分科会提言「感染拡大防止のための効果的な換気について」では、学校についても、「気候等に応じて、・・・出来る限り1,000ppm相当の換気等に取り組むことが望ましい。」とされていることから、これらも踏まえた上で、効果的な換気に取り組むこと。
  • 十分な換気が確保できない場合には、サーキュレータやHEPAフィルタ付き空気清浄機等の導入など、換気のための補完的な措置を講じ、可能な限り十分な換気を確保すること。

3.給食等の食事をとる場面における対策について

  • 給食等の食事をとる場面においては、引き続き、食事の前後の手洗いを徹底するとともに、会食に当たっては、飛沫を飛ばさないように注意すること。
  • その上で、適切な換気を確保するとともに、大声での会話は控える、机を向かい合わせにしない、向かい合わせにする場合には対面の児童生徒の間に一定の距離(1m程度)を確保する等の措置を講じることにより、「黙食」は必要ないこと。

以上のように、新型コロナウイルス感染症についての感染症法上の取り扱いがみなおされる中で、感染対策全体を考慮したうえでのマスク着用の考え方を、特に学校におけるマスク対策を中心にまとめました。

しかし今後の新型コロナウイルス感染症の発生状況、新たな感染症の発生などが発生した場合などには、マスク着用の考え方などにも変化が出る可能性があります。マスク着用には感染対策としての確かなメリットもある一方、子どもたちにおいては大人とは異なるデメリットもあります。今後も十分な情報を基に、広い視野をもってこれらの応報をお届けしたいと思います。